『イギリス系スペイン女』の中で、プロテスタンティズムの守り神たるイギリスのエリザベス女王は、カトリックのイサベラを自らのそばにおいて目をかけてやる。侍女の一人が女王にこう語る。
「イサベラはカトリックで根っからのキリスト教徒でございます。ですからずいぶん多く説得なさったにもかかわらず、一度としてカトリックを捨てようなどという気を起こさなかったのでしょう」。
それに女王が答えて言うには「だからこそ私は彼女をより深く尊敬していたのですよ。だってそうでしょう、ご両親によって教え込まれた戒めをこれほど立派に守ってきたわけですからね」。セルバンテスは実際そうしたようにイギリスのエリザベス女王を描く際に、宮廷生活に関する完全な無知をさらけ出してしまった、と言われてきた。しかし彼は女王に対して、考えうる最高の資質を与えたのである。つまり他者の立場を理解するという資質である。(後略)
(アメリコ・カストロ『セルバンテスの思想』「第六章 宗教思想」本田誠二訳、2004年)
1 件のコメント:
「我々が分析したかつての歴史的雰囲気の中で生起したことは、現在の時点で生起することとはまったく逆である。今日、前向きの宗教というものは、信者の大部分にとって個人性の領域に関係した事柄である。宗教が意識の親密さから脱するのは、それが政治的党派性に堕したときだけである。ということは宗教がそれ自体の可能性において、公共生活で、もはや影響力を及ぼすことができないことを示している。十六世紀末の状況はそれとは別であった。カトリシズムは意識の材料というよりもむしろ国家の材料であった。そして我々の間で国家的名誉と結びついていた。」(同書同章より)
コメントを投稿