2016年5月13日金曜日

引用ノック0857:BP19(-1)

(しっかし、ほんとに挑発しても乗ってこないわね、竹田啓司は……まあ、その冷静さを買って統和機構にスカウトしようっていうんだけど)
(中略)
”いや、油断しない方がいい……仮にも塩多樹梨亜は一度は発見されながらも、逃げおおせた実績があるし、何よりも何年もずっと同じように生活していたのなら、そこには彼女なりの哲学があるはず”

 そういう声が聞こえてきたので、少し眉をひそめる。哲学? こいつ、なに的外れなこと言ってんだ?

”それは買いかぶりすぎですよ、新刻さん。あいつ実際に会えばわかりますって。ホントにしょぼい女なんですから”
”人は見た目によらない……私はそれをよく知っている。それに塩多樹梨亜がストーカーなら、彼女には彼女の正義があって、それを守っているに違いない。これはいわば私たちの正義と、彼女の正義の対立なのだから、勝って当然、みたいな優劣を今のうちから決めつけない方がいいわ……”
(中略)
「では、カタがついたら、竹田くんは……私の好きにしても……?」
「ああ。どうにでもしろ。オモチャにして、なんにでも使えばいいさ」
「……ありがとうございます……」
(後略)

(上遠野浩平『ブギーポップ・チェンジリング 溶暗のデカダント・ブラック』 電撃文庫、2014年)

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