「そうとも、ちがうわ。だれも信じない、なんて言う人もずいぶんいたけど、そんな人たちもみな死んじゃったわ。信じない、と言っても、自分の判断は信じているわけだから、やはり機械と話しているうちに死んじゃうのでしょうね。こうして生き残ったあたしは、やはり信ずる能力が欠けているのかしら」
「まあ、そんなところだろうな」
ブルドーザーは死体の山を、押しながら進んだ。
「生き残った者は、劣っているわけかしら」
「劣っているかどうか、幸福かどうか、そんなことがだれにわかる」
(後略)
(星新一「殉教」『ようこそ地球さん』 新潮文庫、1972年 改版1987年)
1 件のコメント:
”参照のために付記するが、本書の作品はすべて昭和三十六年六月以前のものばかりで、私の初期短編集といえる。 昭和四十七年三月 星 新 一”(『ようこそ地球さん』「あとがき」)
”[……]新潮文庫『ボッコちゃん』に収録しなかった全短編を集めたのがこれである。”(同前)
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