2010年10月5日火曜日

内田樹『下流志向』についてのアマゾンレビュー

4 人中、1人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。


敬愛する内田先生の著書ですが…, 2010/3/21

By ちょーぴん - レビューをすべて見る



レビュー対象商品: 下流志向──学ばない子どもたち、働かない若者たち (単行本)

敬愛する内田先生の著書ということで無条件で☆5をつけたいところではありますが、今回は☆2とさせていただきました。

まず、優れている点から述べると、昨今の学力低下や「ダメ志向」の原因として「学校教育を受ける以前に消費者になっている」ことを挙げられた点です。非常に鋭い指摘だと思います。詳しくは述べませんが、自己決定権やパターナリズムについて考える上でも非常に有益な意見だと感じました。

しかし、究極的にダメな所が2点あります。

まず、権威主義的なところ。

学校教育=素晴らしい。医療=常に患者に最適なサービスを提供。といった無自覚な権威に対する信頼が鼻について仕方ありません。

例えば、インフォームドコンセントの問題に対し、医療の専門家の合理的な判断に反して自己決定を叫ぶことは、単なる自尊感情の表れで自己決定ファシズムだといったことを述べています(ものすごく強引に要約すると)。確かにそういった側面もあるでしょうけど、そういった専門家の掲げる「標準」や「中立」「客観」といった判断根拠はしばしば少数者に該当しないことも多々あるし、医者自身も新しい治療法の実績を作りたいといった点から、患者にデメリットとなる選択を進めることもあるのではないでしょうか?

そして何より気になったのが、本書のターゲットです。一体、誰に向けて書いた本なんでしょうか?

おそらく、本書を読んで満足するのは、50歳以上の割合社会的地位のある、「最近の若者はやっぱり駄目だ」と感じたい人だけでしょう。

学問的には素晴らしいと思いますよ。しかし、変化=悪とどこか決め付けている印象があり、その変化にどう対応すべきかといった肝心なところがすっからかんな気がします。本書を手に取る一番のボリュームゾーンは、「学ばない子どもたち、働かない若者たち」を子にもつ親でしょう。そういった読み手には何も伝わらない、まったく何の為に書かれた本なのか分からないものだと感じました。

http://www.amazon.co.jp/product-reviews/4062138271/ref=cm_cr_pr_link_next_2?ie=UTF8&showViewpoints=0&filterBy=addTwoStar&pageNumber=2

関連エントリ:坪井野球ブログ「内田樹『下流志向』についてのレビュー 」
http://2boy-yakyu.blogspot.com/2010/10/blog-post_11.html

0 件のコメント: