ふんだんに刺繍の施された布は
時に貨幣以上の価値を持つ
作り手の社会的地位と帰属を表し
その人となりを物語る
特別な1枚は特に入念に仕上げられ
受け継がれるその家独自の文様には
気が遠くなるほどの時間と手間と…………
(中略)
とはいえその姿には
気負ったところは見られない
談笑しながら針を刺し
仕事の合間に糸をつむぐ
そうするのが当たり前で
ごく日常の風景であり
つまりは生活である
(スミスのノート: 森薫『乙嫁語り 2』「十話」 2010年、株式会社KADOKAWA)
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