2018年9月10日月曜日

ペスト再訪前整備(第二夜)

 この小説は自分の見たところ、会話に見所が多い。
 戯曲でいいじゃないかという問いには、まあいいじゃないかと返杯したい。
 カミュ『ペスト』に戻ってゆく。以下、タルーとリウーの問答。


「なるほど」と、タルーはうなずいた。「いわれる意味はわかります。しかし、あなたの勝利は常に一時的なものですね。ただそれだけですよ」
  リウーは暗い気持ちになったようであった。
「常にね、それは知っています。それだからって、戦いをやめる理由にはなりません」
「確かに、理由にはなりません。しかし、そうなると僕は考えてみたくなるんですがね、このペストがあなたにとって果してどういうものになるか」
「ええ、そうです」と、リウーはいった。「際限なく続く敗北です」

 この会話には、線で追っていかないとみえてこない微妙なものがあった気がするが、再訪しないと思い出せない。
 三つに一つしか助からない、という意味合いのことを言われ、頑として聞かないということは経て、このパートの終わりはリウーの爆笑(かなりレア)で終わる。同時にタルーを動かす道徳が示されるが、ここは精神的にケチなところを見せて、伏せておきたい。

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