このときから三人をたずねて二十年間の放浪生活を送った。その間、清水の次郎長の養子になって富士の裾野の開墾にあたったこともある。子規と出会ったときは、すでに父母との再会をあきらめて得度し、京都清水産寧坂の庵で暮らしていた。骨のある人物である。
(中略)
柿はよい木である。若葉。真夏の木陰。朱色の実。落葉。簡潔な冬の姿もよい。そして何よりこの木はいつも人の近くにある。
(中略)
この二つの間に子規の句をおけば、子規の位置がみえてくる。(中略)
[人間]
(……)
やがてどこからともなく八十八羽の鴉が集まって来て犬の腹といわず顔といわず食いはじめた。
(後略)
(長谷川櫂『子規の宇宙』「第三章 子規の食卓」 角川選書、2010年 該当章初出:1991-1994)
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