されば、狂言は皆人(みなびと)のもの、皆人(みなびと)に見せられたものにござりまする。(……)その後に至ると、狂言は生れ素性のいやしさをお歴々並みの位で輝かし、ローペ・デ・ルエダ、シェークスピヤ、モリエールの面々がお伽噺の恋皇子(こひみこ)でもないに、灰掻娘(サンドリオン)を詩歌や藝術の高御座(たかみくら)に据(す)えてしまつた。但し、現代(いまのよ)の一詩人が沈着(おちつき)を知らない精神(こころ)の物好きから、皆様方のお目通りへ持出しまするこの狂言を、どうして左様に立派な系図のものとは申しませぬ。(後略)
(ベナベンテ『作り上げた利害』永田寛定訳、岩波文庫 1928年)
(旧字体一部変更)
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