この「三島由紀夫論」でミラーは他にも興味深い指摘を幾つかしている。例えば、「もしヒトラーを笑わせることができる者がいたら、あれほどの悲劇は起こらなかっただろう」とか、「日本の作家はミラーのように六十歳になるまで金のない生活をすることに耐えられない。いったん作家として認められると、生活のためと称して金儲けをし始める。」あるいはまた、「日本人はドイツ人と同じように働きすぎである。本当に大切なことは何か考えよ」等々晩年になってなお衰えぬ批判精神と言えよう。
(田澤晴海『ヘンリー・ミラー研究』「アメリカの豊かさを問い直した作家」 芸林書房、1996年)
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