これがなんでややこしいのかというと、「現実」の話であるくせに、この状況の中には他人が一人も出てこないことにある。この話の中に出てきた「他人」というのは、ただ一人、「こっちのせいじゃありませんよ」と言ったガス会社の人間である。というわけで、きみのまずしなければならない「現実への介入」とは、このいっぺん首を出してすぐに引っ込んじゃったガス会社の人間を、ちゃんと引っ張り出すということである。そこで、「だって現実にガスが出てないんだから、見に来い!」の一言が言えなきゃいけない。
分かるか? 人間というのは、存外そういう発想をしないもんだよ。特に、状況が異常になっちゃった時は。しかも、徐々にその「異常」に馴れさせられてしまったような時には。
いいか? 「だって、今の状況でガスが送られて来ないのなんてしかたがない」なんてことを言って、社会から勝手に「責任」というものの存在を消去しちゃうと、その結果は、きみが一人でややこしくなって、気がくるうだけだぞ。
人間、必要のないことは分からなくてもいい。しかし必要なことはちゃんと分からなければならない。この区別がちゃんと出来ていれば、人間、べつになんにも困りゃしない。
(橋本治『貧乏は正しい!』)
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