(……)われら万障くりあはせ
よしの屋で独り酒をのむ
(「逸題」)
勧君金屈巵
満酌不須辞
花発多風雨
人生足別離
コノサカヅキヲ受ケテクレ
ドウゾナミナミツガシテオクレ
ハナニアラシノタトエモアルゾ
「サヨナラ」ダケガ人生ダ
(于武陵「勧酒」:「訳詩」)
(前略)
僕はこれを手文庫にいれたまま
今まで君に送るのを忘れてゐた
けふ木下君のよこした詩を読んで
ついうつかりしてゐたと気がついた
木下君の詩は「ひばりのす」と題されて
左記のごとく可愛らしい
(「陸稲を送る」)
(前略)
仮に荻窪一号とでも呼びたまへ
では今年の秋の豊穣を祈ります
(「ひばりのす」)
あれは誰の山だ
どつしりとした
あの山は
(「あの山」)
岡の麓に泉がある。
その泉の深さは極まるが
湧き出る水は極まり知れぬ
(「泉」)
(……)
僕の感動の最後助(さいごのすけ)だと思はれるのは
京竿で一尺山女魚(やまめ)を釣つたときのものである
(……)
(「誤診」)
三日不言詩口含荊棘
(中略)
今年の寒さは格別だ
寒さが実力を持つてゐる
僕は風邪を引きたくない
おまじなひには詩を書くことだ
(「冬」)
この詩集は、以前に出した私の「厄よけ詩集」の蒸返しである。ただし、「つばなつむうた」「水車は廻る」「夜の横町」の三つを追加した。(……)
(「国文社版『厄除け詩集』あとがき」)
(井伏鱒二『井伏鱒二全詩集』 岩波文庫、2004年)
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