わたしの人間としての最初の記憶は祖母の前庭のことである。一九三六年、あるいは一九三七年のことだ。おそらくあれはジャックだったのだろうが、わたしはひとりの男がその梨の木を伐り倒し、それにびっしょりと石油をかけていたのを憶えている。
ひとりの男が地面に三〇フィートほどの長さで横たわる一本の木にあとからあとから何ガロンもの灯油をかけると、つぎに、枝にまだ青い実をつけているその木に火を放つ光景は、いくら人生最初の記憶とはいえ、異様な光景だった。
(リチャード・ブローティガン『芝生の復讐』「芝生の復讐」藤本和子訳)
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