2013年7月10日水曜日

引用ノック0529:変名

小説『ブリキの太鼓』では、少年団の頭領のひとりの名前は「シュテルテベッカー」だった。彼は生き残り、戦後の時代に立派に成長し、いざこざを厭う高等学校教師シュタールッシュとなった。彼は今では状況に適応した存在となり、別の小説『局部麻酔をかけられて』では、痛みを忘れ、出来事すべてを「一方では……他方では」という尺度ではかるような人間として登場する。

(ギュンター・グラス『玉ねぎの皮をむきながら』依岡隆児訳、集英社、2008年)

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