それでどこかの町外れか、村のような所でキャンプをしようとした時に、いきなり青年団みたいな人たちに取り囲まれたことがあります。一〇人ぐらいだったと思いますけど、そういう目にあった時の恐怖というのは、もう不良にカツアゲされたりとか、そんなものとは比べものにならない。何しろ見知らぬ土地だし、極端に言えば殺されて山の中かどこかに捨てられても、誰にも知られないままなわけですから、しかもその中の一人が何故か、過去に自分が目にケガした経緯を事細かに説明し始めたりして、僕は内心震え上がりました。
ところが実際には「ここは私有地だから焚き火はしないで」「キャンプなら向こうにキャンプ場があるから」みたいな注意をされて、結局そのことを伝えにきただけだったんです。だからと言って一〇人で来ることもないとは思いますけれど。助けの来ない状況の中で孤立してしまう恐怖というのは、こうも心細いものかとその時に思い知りました。
同じ人間どうしでも生活環境が異なる者の間には、時として絶望的なまでのコミュニケーションの断絶が生まれてしまう。(後略)
(荒木飛呂彦『荒木飛呂彦の奇妙なホラー映画論』2011年6月)
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