六頭の騾馬(らば)が一列になって、荷物を山のように積んだ高い幌(ほろ)のついた荷車をひいてきた。これを通してやるためにバスは急角度に道の片側へよった。荷車も騾馬も、ほこりにまみれていた。
(中略)
「やあ、酔いどれ先生、よくきたな」とマイクが言った。
「腹がへって目がさめたんだ」
「スープでも飲めよ」とビルが言った。
三人で同じテーブルをかこんですわったが、まるで六人ぐらいの仲間がいっぺんに脱(ぬ)け落ちてしまったような感じだった。
(ヘミングウェイ『日はまた昇る』新潮文庫、大久保康雄訳、1989年改版)
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