図48[エンドウゾウムシの魔術的な道]は、すでにファーブルが調べたエンドウゾウムシの幼虫の行動様式を説明したものである。この虫はエンドウ豆がまだ若くて軟らかいうちに時宜よろしく表面まで達するトンネルを掘っておき、成虫のゾウムシに変態した後、その間に堅くなってしまったエンドウ豆から脱出するのにそのトンネルを利用する。問題は、ここには、設計としてはじつに見事であるが、ゾウムシの幼虫の立場からすればまったく無意味な行動が関与していることである。なぜなら、将来のゾウムシが受けるであろう感覚刺激がその幼虫に到達するはずないからである。まだ一度も通ったことがないが成虫になったあと悲惨な目に遭いたくなければいずれ通らねばならない道を、幼虫に知らせる知覚記号はない。しかしその道は幼虫の前に魔術的なイメージとしてあらかじめ明確に示されている。経験によって獲得されるなじみの道の代わりに、ここでは生得的な道がその位置を占めているのである。
(ユクスキュル/クリサート『生物から見た世界』「12章 魔術的環世界」日高敏隆・羽田節子訳、岩波文庫)
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