2014年4月13日日曜日

引用ノック0594:二つの泉

二人は監視所を過ぎ、風に揺れる野無花果(いちじく)の樹を過ぎ、城壁から少し離れた車道(くるまみち)をどこまでも走り続け、やがて清らかな水の湧き出る二つの泉に着いた。ここは渦を巻くスカマンドロスの水源をなす二つの泉が湧き出ている。その一つの泉は温く、あたかも燃える火から煙の立つ如く湯気が立ち昇り、もう一つの泉からは、夏には霰(あられ)か冷たい雪か、または水の凍った氷の如く冷たい水が湧いて出る。

(ホメロス『イリアス』「第二十二歌」松平訳)

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