2013年12月26日木曜日

引用ノック0563

金持ちの夫婦がいた。その妻が事故で片目を失い、深い悲しみに閉されていた。そのに夫が来て次のように言った。「つまよ、なぜそんなに悲しむのか。片目を失(なく)したからといって、そんなに悲しんではいけない」と。すると妻が、「あなた、わたしが悲しむのは片目を失したからではありません。あなたが以前のようにわたしを愛して下さらなくなるのではないかと思えて、それが悲しいのです」と言った。すると夫は答えた。「妻よ、わたしはお前をこんなに愛しているではないか。」それからほどなくして、彼は自分の片方の目をえぐり出し、妻のところへ来て言った。「妻よ、お前への愛の証(あかし)に、お前と同じになった。もうわたしも片方の目しかない」と。人間もこの妻と同じである。人間は、神がこれほどに愛してくれていることを、ほとんど信じることができなかった。そのために神はとうとうみずから「片方の目をえぐり出し」、人間の姿となったのである。これが「肉となった」(ヨハネ一•一四)いみである。

(エックハルト「神の子の誕生について (ルカによる福音書第一章第二十八節)[説教二十二]」田島照久編訳『エックハルト説教集』岩波文庫)

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