ルシールはまっすぐにすわりなおした。両頬が赤く染まっている。「わかるでしょ、バーソロミュー、だからあたし、年じゅう目隠しされた馬みたいでいなきゃならないのよ。すぎたことやほかのことを考えたりしないようにね。あたしが考えてもいいのは、毎日働きに出ることと、三度の食事の支度をすることと、それからベイビーの将来のことだけ」
「うむ」
「あなたもそうするといいのよ──すぎたことは考えたりしないこと」
ビフは胸もとまで首をうなだれ、目を閉じた。長い一日のあいだじゅう、アリスのことを考えることができずにいたのだ。
(マッカラーズ『心は孤独な狩人』新潮文庫)
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