2012年2月1日水曜日

引用ノック0361:ドスのきいたリアリズム(携帯)

司馬遼太郎さんは晩年、こう語っている。戦前、日本の作家・ジャーナリストは軍事についてまったく無知だった、と。「日本の私小説の現実感覚は、社会や国家に対して現実という立場からの凄みを効かせるというふうにはならなかった。日本には国家や社会に畏れを感じさせるようなドスのきいたリアリズムは育たなかった」と、このように悔やんでいる。明治大正のインテリは軍事という具体性のなかから内外を見ようとせず、軍事を別世界のことだと思いこんできたので、昭和に入って軍部の独走を招いた、と。
(猪瀬直樹『言葉の力』)

0 件のコメント: