2014年11月9日日曜日

引用ノック0670:墨汁一滴

(前略)かくては生けるかひもなし。はた如何にして病の床(とこ)のつれづれを慰めてんや。思ひくし居るほどにふと考へ得たるところありて終に墨汁一滴といふものを書かましと思ひたちぬ。こは長きも二十行を限(かぎり)とし短きは十五行あるいは一行二行もあるべし。病の間(ひま)をうかがひてその時胸に浮びたる事何にてもあれ書きちらさんには全く書かざるには勝りなんかとなり。(中略)
筆禿(ち)びて返り咲くべき花もなし
(一月二十四日)
(正岡子規『墨汁一滴』)

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