2014年7月30日水曜日

引用ノック0638:So hee

 十六くらいになった時、私は突如として、言葉そのものの楽しさを見いだした。言葉のひびきとか、言葉の作り出す連想作用の楽しみのことである。『失楽園』の次の二行、

So hee with difficulty and labour hard
Moved on : with difficulty and labour hee,
かくて彼は、苦しみつつ、激しく努力しつつ、
進み行けり。苦しみつつ、努力しつつ、彼は。 

 それらは、今ではそれほどすばらしいとも感じられないのだが、背中がぞくぞくするほど私を感動させたものだ。特に”he”を”hee”と書くことなどで、さらに楽しみのふえる感じだった。

(ジョージ・オーウェル「なぜ私は書くか」鶴見俊輔訳、『オーウェル著作集 1 1920-1940』収録)

cf. John Milton "Paradise Lost"
http://www.gutenberg.org/cache/epub/26/pg26.html

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