2014年2月13日木曜日

引用ノック0577:General Will and Deliberations

 ここ[ロートバゴイ族の国]を離れ、辛(つら)い気持を抱きながらさらに船を進め、やがて野蛮非道なキュクロプス族の国に達したのだが、この者たちは不死なる神々を当てにして、自ら手を労して種子を蒔くことも畑を耕すこともせぬ。ところが種子も蒔かず畑も耕しもせぬのに何でも育つ──小麦、大麦、それに酒を造る見事な房を実らす葡萄の木もひとりでに生え、ゼウスの降らす雨に養われてすくすくと育つ。ここには評議の場たる集会も定まった掟もないし、彼らは高い山岳の頂きにある、空(うつ)ろな洞窟に住み、それぞれ自分の妻子は取り締まるけれども、他とは互いに全く無関心で暮らしている。

(ホメロス『オデュッセイア』「第八歌」 松平千秋訳)

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