2014年1月16日木曜日

スタッキング可能メモ(ネタバレ含む)

きづいたことを列挙。随時足す。

・階数
→読み合わせた友人の指摘だが、一階にビルを巡回して事情通な『わたし』がいる。上の方の階にいくほど、○○という傾向がある。
※例えば、漱石『行人』を参照してみると、主人公のひとり二郎の住宅の、一~三階までで似たような使い分けがされている筈。
※○○要確認。概念的、あたりかな?

『わたし』の職業
→掃除夫とみるのが妥当か。ほかの職業の可能性もある。警備員、特権的立場の社員など。

・表題の意味
→A、B、C……Zと似たような人格が列で横並びになっており、縦に田、山、川……と積み上がる(スタッキングする)というのが自分の解釈。
『わたし』は俯瞰してそれを観察、配置(再配置)する、介入可能な一種の視点人物。
※中上健二の小説における”オリュウノオバ”に似たイメージ。

・コージー・ミステリ狂のD系さんの会話の謎
→コージー・ミステリ(小説の形式の名前)に耽溺しているD系さん達は、仕事中の会話を脳内で勝手にそれ風に変換している(原文太字部分)。(※裏づけとなる該当部分、本文にあり。)
具体的に何が謎となっているかについて、現時点で確証はないものの、最後に登場するD系の人物は感情が動いているフシがある。これが読解のキーになるはず。

・熱視線
→冒頭に出てくるレズビアン会議参加者のA系の男、酒で赤くなったB系の男性に熱視線送ってるんだよなあ。

・川に反射する窓の群
→おそらく、村上春樹『風の歌を聞け』の有名なシーンへのオマージュ。
眺めている人物を含め、『わたし』と思われる人物以外はよく見えていない。映っていない。
村上春樹では2D(デビュー作)→3D(『アフターダーク』)という流れを抽出できる。
逆にこの小説では、立体的な像が川の水面に投射されて二次元になる。この作品において遠景は少なく、ゆえに重要なシーン。
※キューブリック『2001年宇宙の旅』から遡行してホメロス『オデュッセイア』、ジョイス『ユリシーズ』へ。

・虹の生き物
→これは奥さん

・人物スタッキング問題(課題)
→『わたし』だけ、ほかの人格群とちがって単一性を保持しているように認識しているが果たしてどうか。”チームリーダー”はE系と謎めいたオランウータンを兼備している。
チームリーダーが『わたし』によって再編成される、というのが自分のこの小説に対する基本的な読み。
(以上の読解を踏まえ、漫F画太郎による、原作小説を編み変えてつくられた漫画『罪と罰』とかなり似た物語構造になっていると考える。同作品においては、女編集長と、世界の再編を目指すマヨ(マオ)が重要な役割を果たす。また、チームリーダーのように世界(国)の中心となる存在がここでは王と呼ばれている。)

・タンブラー
→mixi等のSNSと同様、チープで頽落したコミュニケーションツールとして最初言及される。また冒頭のコージー・ミステリ調と思われる太字部分にスターバックスのタンブラーが出てきている。混入についての記述もある。この小説の自己紹介みたいなものだろうか。

三読したのはスタッキング的でなかなか乙と思っているが、俺自身ふらりとここに来てこのエントリみたらケッとは思うだろう。

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