同様のことが、ぼくの健康についてもいえるのです。ぼくは、若い頃から身体が弱く、病気がちで、独立してからもしかるべき人に仕事を任せていかざるを得ませんでした。病身であることは一般的に見れば不幸なことかも知れませんが、おかげで、人間というものは誰もがそれぞれにすばらしい持ち味や能力を持っているということを実感することができましたし、その人たちの協力でぼくの力ではとうていおよばないような大きな仕事ができたように思います。
考えてみれば、健康であることにこしたことはありませんが、病にかかったからといって、それが必ずしも人を不幸にするとは限りません。世の中には、病にかかったことによって、人間の気持ちというものをよりよく知ることができるようになって幸せになったという場合もあるでしょうし、その反対に、自分の健康を過信して、不幸に陥るというようなこともあると思います。
(「功徳天と黒闇天」 松下幸之助『人生談義』)
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