──あるとき、わたくしの魂は高く揚げられ、そしてわたくしは、それまで一度としてそのように神を観じたことのなかった大いなる明瞭さにおいて、それまで一度として経験しなかった完全なる観じ方によって、神を観じた。そして私は神の内に愛を見なかった。わたくしは以前に抱いていた愛を失った。私は非愛となった。
──わたくしは非愛となった。そしてそののち、わたくしは神をひとつの闇の内に観じた。闇の内に観じたのは、神は思惟あるいは理解され得るものよりも大きな善であるからだ。
(古井由吉『神秘の人びと』所収「虚白の部屋」より。──上記の文章は、マルティン・ブーバー『神秘体験告白集』のなかのスペインの修道女(?)の告白を古井が訳したもの。要確認だが、おそらくブーバーの本は邦訳されていない。また、この「告白」は、川本ケンが、黒沢清『ニンゲン合格』について『スタジオ・ボイス』で書いた文章によって知った。)
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