2010年10月30日土曜日

引用ノック0021:井伏鱒二「草野球の審判」

 人影はラッパ飲みを止すと、今度はバックネットのそばに行つてホームプレートの位置に立ちどまつた。長いズボンに白い靴をはき、運動帽をかぶつてゐる。年恰好はわからない。この人物が少し足を広げたと思ふと、いきなり手を挙げて異様な声を出した。「チュー」といふやうな、「チャー」といふやうな鋭い声である。次に「ポー」といふやうな声を出した。
(井伏鱒二「草野球の審判」)

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