2017年2月1日水曜日

引用ノック0918:

明治四年。廃藩置県。
これも実生活に関係のある事件ではなかった。名称の変更である。泉藩は泉県と変り、まもなく海岸ぞいの二県との合併がなされ、磐前県となる。さらに明治九年にいたって、若松、福島との合併がなされ、いまの福島県となるのである。
(中略)
時間が流れる。大声で助けを呼んだが、だれも来てくれない。
(……)
「たぶん、梁に の上にあがれるだろう」
「わかった。じゃあ、ぼくは落ちよう。友よ、グッドバイ」

読んで、佐吉がまず感動した。これまでに接してきた儒教の影響の多い本には、こんな話はのっていなかった。
(中略)
「一という名だ」
喜三太は紙に書いてみせた。(……)しかし「一」なら、だれにも書ける。
佐吉を改名させるに関し、喜三太は最も簡単な字を選んだ。(後略)

(星新一『明治・父・アメリカ』 新潮文庫、1978年)

0 件のコメント: