2015年12月17日木曜日

引用ノック0802:

ザジモーク(冬の始まり。霜が降り、初雪を見る頃)、そう初雪だ! だがボルゾイ犬はいない。十一月の狩りはこの犬なしでは何もできない。それでも冬はやってくる。勢子犬を使って「仕事」を始める。
 昔のように、また小地主たちが寄り集まり、なけなしの金で飲み、毎日朝から晩まで雪の野に出てゆく。晩になると、遠くの冬の夜の暗闇の中で、どこか冴えない農場の離れの窓に灯がみえている。そこでは、煙がもうもうとし、脂ろうそくが燃え、ギターの音がしている……

  黄昏れどき、
  そとには風が荒れ狂っている
  それでも広い我が家の門は
  開け放たれている

 誰かが胸いっぱいにテノールで歌いはじめる。ほかの人たちも、ばらばらに、寂しげに、勝手に、乱暴な声で、わざとふざけ半分で和して歌っている。(後略)

(イワン・アレクセーヴィチ・ブーニン『アントーノフカ』 町田清朗訳、未知谷、2007年)

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