その後、カセットテープの手前に小汚い座布団を1枚敷いただけの小さなステージができ、皆、先を争うようにしてそこに立つようになった。そして、殴り合いになりそうになったり、言葉に詰まった奴を野次ったりして、しまいにはメギちゃんまでが己の今の境遇をラップにし、オレたちは遠慮なしに腹を抱えてゲラゲラと笑った。
オレたちはメギちゃんちに集まる度に、この悪口バトルに夢中になるようになった。また、少しでも相手より強烈で気の利いた言葉を浴びせつけるために、それぞれが退屈な授業中などにフレーズをこっそり考えるようにもなり、オレたちは日に日に口達者になっていった。そして、滅入ることや悲しいことが身の回りで起こっても、それをギャグにして笑い飛ばす習性がつき、それが結果的にこれからのムチャクチャな9ヶ月間を乗り切るための最大の武器となった。
(ゲッツ板谷『ワルボロ』「第11章 ラップでGO!」)
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