“53本目”。(55)
水曜日 継母の従兄弟を訪ねてみる
金曜日 姪が歯医者へ行くので付き合う
「暇だね。」 俺の顔に何か付いてるかい
覗き込んでニヤリと囁いた
「ボタンを掛け違えたまま大人になるのは厭ね。」
ああ、聞いた風なことを言う娘だね
そうさ、遺産があればしばらくしのげる
今夜あつらえた黒のスーツを下ろす
「どうにも深刻さが足りない、お前には。」
溜息をついて叔父は嘆いた
「ボタンを掛け違えたまま年をとるのは恥ずべきことだ。」
親父の通夜でからまれる
グラスの底に沈む顔と目が合えば
苦笑いで野郎はうそぶいた
「俺だけのシャツの着こなし、姿見の前を逃げ出し、
ボタンを掛け違えたまま年をとるのは切ない。」
ああ、知った風なことを言うね
(キリンジ「奴のシャツ」)
金曜日 姪が歯医者へ行くので付き合う
「暇だね。」 俺の顔に何か付いてるかい
覗き込んでニヤリと囁いた
「ボタンを掛け違えたまま大人になるのは厭ね。」
ああ、聞いた風なことを言う娘だね
そうさ、遺産があればしばらくしのげる
今夜あつらえた黒のスーツを下ろす
「どうにも深刻さが足りない、お前には。」
溜息をついて叔父は嘆いた
「ボタンを掛け違えたまま年をとるのは恥ずべきことだ。」
親父の通夜でからまれる
グラスの底に沈む顔と目が合えば
苦笑いで野郎はうそぶいた
「俺だけのシャツの着こなし、姿見の前を逃げ出し、
ボタンを掛け違えたまま年をとるのは切ない。」
ああ、知った風なことを言うね
(キリンジ「奴のシャツ」)
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