2012年11月4日日曜日

ロレンス「黙示録論」メモ

「(5) 公民として、集団的存在としては、人は己が権力意識をば満足させることにおいて自己を充足させる。もし彼がいわゆる《支配的な国家》の一つに属しているならば、その魂は己が国の力、すなわち国力を意識することにおいて充たされる。ゆえに、自分の国が一種の教会政治をなして、いわば貴族主義的に栄光と権力の頂点に登りゆくなら、彼もまたその組織のうちに、それに応じて己れの地位を保持して、それだけにますます自己充足を得るであろう。だが、これに反して、その国が強力ではあるが、民主主義的国家であるという場合、人は、他人がその欲することを行うのを不断に干渉し妨害することによって、自己の力を主張しようという妄念に憑かれ引きずり廻されざるをえない。そこにおいては何人も他の人以上にことをなすのを禁じられているからだ。かかる状態こそ、いわば不断の弱いものいじめが、近代民主主義国の実情なのである。」

(D.H.ロレンス『現代人は愛しうるか――黙示録論』 福田恆存訳 中公文庫、1982年: D.H.Lawrence "Apocalypse" 1930

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